LINEノベルはなぜ終了するのか 理由を考えてみた。
7月9日。LINEノベルが8月末にてサービス終了を発表しました。
1周年を目前にし、まだまだこれからと期待していましたので、少し残念でした。
今回はLINEノベルの何がダメだったのかを考えてみました。
前置き。
私はLINEノベルのユーザーではありません。一度、試しにダウンロードしてみたことがある程度の知識です。
そのため、この記事には個人的な見解が含まれています。
- LINEノベルとは?
- 三木一馬とストレートエッジ
- アプリをダウンロードしてみる
- 読者視点 読書時間というシステム
- 「スマホで読む」と言う読書習慣
- 執筆者視点 スマホとPC
- LINEノベルのユーザー層
- 看板作品の不在と宣伝の薄さ
- 令和小説大賞のその後
- まとめ
LINEノベルとは?
LINEが提供するサービスで、KADOKAWA、講談社、新潮社、集英社をはじめとした出版9社が作品を提供する小説プラットホームサービス。
LINEが提供するという点と、出版社の規模の大きささから話題になりました。
投稿者が書籍化の際に、出版社を選べるというのも大きかったように思います。
三木一馬とストレートエッジ
LINEノベルの編集長を務めるのが、株式会社ストレートエッジの三木一馬さん。
KADOKAWA出身で、電撃文庫にて編集を行っていました。
『灼眼のシャナ』『とある魔術の禁書目録』『ソードアート・オンライン』『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』など数々の名作の編集を担当しました。
メディアミックスに非常に強いイメージです。
2017年の独立後も関わり深かった有名作家たちを抱えています。
アプリをダウンロードしてみる
まずは実際にアプリを触ってみます。
レビューを見ると「検索機能が使いづらい」など、今は改善されている部分も多いのでしょうが、悪評が目立ちます。
これでは新規のユーザーもあまり良いイメージは持たないでしょう。
実際に使ってみると、非常に読みやすい。
作品の掲載数にも驚きました。
有名な作家の人気作が、一般文芸・ライトノベル共に充実していました。
このラインナップならば、ユーザーも満足するだろうと思ったのですが、LINEノベルには大きな問題がありました。
読者視点 読書時間というシステム
LINEノベルにはチケットシステムが導入されています。
これはマンガアプリなどと同様で、毎日の無料分を使ったあとは、チケットを使って読書が出来ます。
しかし、無料分は1日3話。チケットは1日1作品に3枚まで。
続きはコインによる課金が必要になります。
これではほとんど読めません。
※投稿作品は無制限で読めます。
さらに「読書時間」という特殊なシステムがあります。
読書時間が一定時間を超えるごとに、チケットが配布されるというものです。
でも、読書時間は人によって様々です。
読むのが早いユーザーは、遅いユーザーに比べてチケットが少なくなるという意見が目立ちました。
「スマホで読む」と言う読書習慣
読書時間システムは、ユーザ―に「スマホで読む読書習慣」をもたせるという狙いがあるようです。
ここに問題がありました。
「無料でたくさん読ませろ!」と言いたいわけではありません。
読書とチケットシステムの相性の問題です。
このチケットシステムは課金をしなければ、複数の本を併読する形になります。
しかし、そもそも読書は一つの本をじっくり読むことが多いはずです。
マンガのように毎話引きやオチが用意されている訳ではありません。
本来ひとつの本として形になっている小説が細かく区切られています。
必然的に読者は、もやもやを多く抱えることになります。
結局のところ、アプリを試し読みに使って、課金するくらいなら本を買うというパターンは多かったと思います。
これでは作品の購入には繋がりますが、LINEノベルの繁栄には繋がりません。
そもそも読書習慣がある人は、よりこの傾向が強かったのではないでしょうか。
執筆者視点 スマホとPC
次に作品投稿する筆者視点で見てみます。
LINEノベルのアプリは基本的に閲覧用で、執筆はPCもしくはブラウザからでした。
スマホで文章を書く人も増えてきましたが、PCで執筆することに慣れている人が多いはず。
そのため、アプリだけでなくPCでも様々な小説を自由に閲覧できること、もしくはアプリでも執筆出来るようにし、どちらか片方で完結できることが重要だったように思います。
また初期はアプリからブラウザの執筆画面に飛ぶことが出来なかったようなので、ユーザーが根付かなかったのかもしれません。
アプリとPCを行き来しないといけないと言うのは、ユーザーの中ではストレスを感じる人も居たと思います。
ただ執筆機能自体は充実していて、使いやすそうでした。
ユーザーの意見を募って、システムへ積極的に取り入れていくのも大切だったように感じます。
LINEノベルのユーザー層
細かいデータはありませんでしたが、総合ランキングを見ると女性向け作品がズラリと並びます。
ユーザー層に女性が多いことが考えられます。
しかし、LINE文庫やLINE文庫エッジは女性向けレーベルと言うわけではありません。
編集者の三木さんが得意とするのも男性向けライトノベルのはずです。
複数の出版社を母体とするため、本のジャンルを絞るという事は出来なかったのでしょうが、少し立ち位置があいまいになり、他レーベルとの差別化は難しかったように思います。
看板作品の不在と宣伝の薄さ
おそらく一番の問題であったのがこれかもしれません。
レーベル初期は看板作品がないのは仕方がないことです。
宣伝は三木さんや著者にほとんどお任せになっており、母体であるLINEからの作品の売り込みが足りなかったように感じています。
もっと長い目で見て、レーベルを育ててほしかった。見切りをつけるのが早い。
今更どうしようもないことですが、そう思ってしまいます。
令和小説大賞のその後
LINEノベルの開始と共に募集された『令和小説大賞』。
LINE・日テレ・アニプレックスによる文学賞で、大賞作品は書籍化・アニメ化が確約されると言う大変夢のある賞でした。
「サービス終了するということは、これも無かったことになるのかな?」と思いましたが、大賞作家の遊歩新夢さんによると進行中とのことでした。
令和小説大賞受賞作
— 遊歩新夢@作家/8月25日新刊『小悪魔だけど恋愛音痴なセンパイが今日も可愛い』出ます! (@Sir_Euphonium_Z) 2020年7月8日
『星になりたかった君と』は、順調にすべて動いておりますので、楽しみにお待ちくださいませ。
コロナなどでいろいろスケジュールも大変で、公式に何か発表できるまでもうちょっとお時間いただく感じになりますが、いいものができつつありますので!
作品が映像化された後なら、また流れも変わっていたのかもしれません。
まとめ
個人的に考えるLINEノベルの失敗理由は以下の4つです。
- 読書とチケット制の不和
- ユーザーの創作環境
- 他レーベルとの差別化
- 作品宣伝の薄さ
三木さんが今回の失敗を生かして次に何を仕掛けてくるのか楽しみにしています。
『星になりたかった君と』のアニメ化も楽しみですね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
*1:https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784048657150 版元ドットコム『面白ければなんでもあり 発行累計6000万部-とある編集の仕事目録』三木一馬.KADOKAWA.2015 より引用