【感想】アニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』とそれ見て泣いた俺
12月26日某所。
私は映画館で鬼滅キッズの群れに埋もれていた。
クリスマスより公開が始まったアニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』を見るためである。
映画館は『鬼滅の刃』を見に来た子供たち、家族連れで溢れていた。
「ええい!私は仕事の疲れを甘々な青春恋愛アニメを見て癒しにきたのだそこをどかんかあぁ!!」と思いながらソーシャルディスタンスを保っていた。
『ジョゼと虎と魚たち』は田辺聖子原作の短編小説をもとにして作られたものであり、注目すべきは何といってもその美麗なアニメーションだ。
予告PVを見た瞬間、「行かねば」と思ったほどである。
主題歌は人気アーティストEveさんが担当するという事で、若者にも話題になっていた。
ニコニコ動画出身の歌い手。2019年に自身のYoutubeチャンネルが100万登録を突破。「ドラマツルギー」など数々の人気曲を持つ。
なんかもうPV見てるだけで謎の満足感がある。
それにしても、30P程度の短編小説をどんな話にするのだろうか。
PVを見る限り、甘々な青春恋愛ドラマっぽいな。
「それでもお前が好きだ!」とか主人公が叫んだりするのだろうか。と作品に思いを馳せながらメガネを拭いていたらメガネが壊れた。
フレームが分裂しレンズが飛び出た。
時間もテープも無かったので、仕方なく眼鏡の呼吸壱の型「握力」でレンズをフレームにねじ込み、フレームを変形させてくっつけた。
原作小説について
1984年に発表された芥川賞作家・田辺聖子の短編小説。自分のことをジョゼと名乗る車いすの女性・クミ子と大学生恒夫(つねお)の純愛とエロティシズムを描いたラブストーリー。
原作小説は、時代を感じさせてくれる大人向けの小説と言った感じだ。
しかし40年以上前の作品がなぜ今になってアニメ映画になるのか?
ジョゼ虎が人気になった大きな理由は実写映画にある。
実写映画について
2003年に公開。妻夫木聡主演。小説を原作としつつ、前後の話を広げて、三角関係を取り入れたりしながら作品世界を広げた大人向けの作品。
当時妻夫木聡と池脇千鶴、江口のりこのベッドシーンが話題になっていた。
実は私もジョゼ虎を知ったのはこの作品が最初であった。
というのも、昔は深夜のテレビで普通にこういう映画がやっていたのである。ビンタビンタのシーンが大変印象に残っている。
そして実写映画のラストはハッピーエンドでは無い。
こうして実写映画ジョゼ虎は、視聴者の心に何かいろんなものを刺したり焼き付けたりして去っていった。
そうして時が経つこと数年。
純愛を求める人々が増えたこの令和時代に、ジョゼ虎は姿を変えて蘇ったのである。
※実写映画とアニメ映画は基本的に別作品として考えると良い
アニメ映画の物語の特徴
幼い頃から車いすで、本と絵と想像の中で生きている女の子ジョゼ。留学を夢見る大学生恒夫は、そんな彼女を助けたことをきっかけに世話係のバイトを任されることに…
アニメ映画では原作を尊重しつつ、実写映画からも「海」や「三角関係」など、いくつか物語の設定を持ってきていると感じた。
ジョゼと恒夫が出会うシーンや、「ジョゼ」の由来、「虎」に関してなど原作の重要な部分が生かされていた。
なぜタイトルに「虎」が入っているのかがとても良いんじゃ……そのまま使われてて良かった。
大きく変わったのが、「魚」についてだろう。
主人公がダイビングをしていたり、ジョゼが人魚に例えられたりなど作品全体に「海」「魚」のイメージが散りばめられていた。
この変更は素晴らしいと思ったしクッソ美しいしとても良いので劇場で見て。
作品全体で見れば、時代に合わせて変化した「令和のジョゼ虎」と言った感じ。
恋愛物語ではなくジョゼの物語。
障がいの物語ではなく心の成長の物語。
個人的には原作を尊重しているのを感じられて好感を持てたし、万人に薦められる良い映画に仕上がっているなと思った。
2020年の映画納めにふさわしかった。
ただ前情報ほとんど無しで行ったので、物語中盤あたりでストレスマッハになった。
死ぬかと思った。