蘇った腐れ大学生 森見登美彦『四畳半タイムマシンブルース』に注目
しかも私が大好きな「サマータイムマシン・ブルース」と混ざってる？？？
今回は『四畳半タイムマシン・ブルース』について。
私が好きな森見登美彦最新作のお話。
『四畳半タイムマシンブルース』とは？
2020年５月10日より、森見登美彦最新作である『四畳半タイムマシンブルース』の連載が̚カドブンにて連載が開始されました。
５月、６月、７月の３ヶ月にわたって連載されます。
『四畳半神話体系』（2005）の正当な続編であり、上田誠（劇団ヨーロッパ企画）の戯曲である「サマータイムマシン・ブルース」を四畳半の登場人物を使ってリライトすると言う挑戦的な作品です。
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『四畳半神話大系』について
『四畳半神話大系』は森見登美彦の小説。太田出版より2005年に刊行。のちに2008年に角川書店より文庫化。
2010年には湯浅政明監督によりノイタミナにてアニメ化もしています。
「平行世界」を物語にとりいれており、主人公である京都の腐れ大学生「私」が、入学した時に「もしあの道を選んでいたらどんな学生生活になっていただろうか？」という分岐点から、それぞれの物語を描いています。
小説では４章構成でしたが、アニメ化の際には平行世界のパターンが増えています。浅沼晋太郎さんが演じる「私」の快活な語り口が癖になる作品です。
小説から見れば約15年。アニメから見ても10年の時を経ての続編刊行となりました。
『サマータイムマシン・ブルース』について
『サマータイムマシン・ブルース』は上田誠の戯曲。2001年に劇団ヨーロッパ企画（上田誠が主宰する劇団）によって公演されました。
「SF研究会」の前に突如現れたタイムマシンと未来人。彼らはこれを私欲のために利用することにし、壊してしまったエアコンのリモコンを昨日に戻って取ってこようとするのであった。
｢昨日｣と｢今日｣だけのタイムトラベル物語。
森見登美彦と上田誠の関係
森見登美彦作品の映像化に関して欠かすことの出来ない人が、上田誠さんです。
『四畳半神話大系』にはじまり、劇場アニメ『夜は短し歩けよ乙女』（2017）『ペンギン・ハイウェイ』（2018）の脚本を担当されています。
プライベートでも交流が深く、小説を脚本にしてもらえたように、戯曲を小説にしたいという思いが強くあったそうです。
今回はその思いが形になった作品です。
ですが完成までの苦労もたくさんあって…
詳しくは対談をご覧ください▼
森見登美彦の作品群の特徴
森見作品で代表的ななテーマとして、京都を舞台とし大学生が主人公である「腐れ大学生もの」があります。
『四畳半神話大系』をはじめ、『夜は短し歩けよ乙女』など。その独特の文体や言い回しに人気があります。
今回はテーマでは無く、別のアプローチから森見作品を分けてみたいと思います。
私は個人的に刊行順によって大きく二つに分けています。
2011年に森見先生は連載小説を抱えすぎて破綻しました。
神経の衰弱により抱えていた仕事をいったん停止しました。
体調の回復にそって、満身創痍で書いていた連載小説をまとめ直し、刊行していきました。
それが2013年以降の『聖なる怠け者の冒険』(2015)、『有頂天家族 二代目の帰朝』(2015)『夜行』(2016)『熱帯』(2018)となります。
のちにここまでは「2011年の後始末であった」と語っています。
なので、今回連載が開始された『四畳半タイムマシンブルース』は完全新作ということになります。
今回は完成させてから公開しているので、破綻の心配もありません。
おわりに
今回は森見登美彦最新作『四畳半タイムマシンブルース』について書きました。
久しぶりの「腐れ大学生もの」に胸躍る思いです。
刊行が待ち遠しいので、「サマータイムマシン・ブルース」の映画を見て待とうと思います。
「俺のヴィダルサスーンを返せぇー！！」
さすがに気が早い
参考文献
『文藝別冊 ［総特集］森見登美彦 作家は机上で冒険する！』渡辺真美子編．河出書房．2019
*1:https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784041095638 版元ドットコム『四畳半タイムマシンブルース』森見登美彦．KADOKAWA．2020 より引用
*2:https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784043878017『四畳半神話大系』森見登美彦著．KADOKAWA．2005
