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ライトノベルは低俗ですか? 「ラノベは令和の漱石・太宰」日本経済新聞・文化時評を読む

2020年5月17日。

日本経済新聞・文化時評において「ラノベは令和の漱石・太宰」と言うタイトルで、ライトノベルが取り上げられたの情報が入ってきた。

 

興味がある。

私はコンビニに駆けこんだ。

 

書影に取り上げられたとのことで、『弱キャラ友崎くん』シリーズの作者、屋久ユウキ先生も反応されていました。

 

今回はこの文化時評を読んでみた感想を書いていきます。

 

 

記事の内容

本文が気になった方は日本経済新聞バックナンバーより購入することが出来ます。

support.nikkei.com

 

記事のポイント

  • 記事の発端・中心は「俺ガイル」の完結
  • ラノベの成長と市場縮小
  • 若者層に青春小説、30代に往年のラノベが人気。世代交代
  • 太宰・漱石に触れているのは最後の数行のみ

 

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。

*1

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やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 14』渡航小学館.2019

作者は渡航先生。2011年3月から2019年11月にかけて全17巻(本編14巻、外伝3巻)がガガガ文庫小学館)より刊行。通称俺ガイル。

累計発行部数は1千万部を超えます。

このライトノベルがすごい!』(宝島社)では3年連続で作品部門1位を獲得し、史上初の殿堂入りをした2010年代を代表するライトノベルです。

完結編となるアニメ3期の放送も決定しています。

youtu.be

 

記事においては、「『頭を使わない低俗なもの』。そう言われない作品を書いた」という見出しに始まり、この「俺ガイル」の完結と渡航先生の作品への考えが、簡潔で分かりやすく書かれています。

 

作者の考えについて 詳しくはこちらへ▼

www.asahi.com

 

ラノベの成長と世代の交代

  1. ライトノベル」というジャンルの誕生
  2.  2012年をピークにして市場縮小
  3. 「俺ガイル」を代表する青春ラノベの台頭

 

元々はジュブナイルに変わる形で誕生したライトノベルが、2000~2010年を全盛期として長年愛されてきました。

そこでの「ライトノベル」のイメージは、異世界や魔法、対決ものでした。

現在はそういったジャンルの読者の中心は30代となり、若い世代は青春小説を読んでいるということです。

 

記事の感想

記事の本文には『やはり俺の青春ラブコメは間違っている。』やライトノベルへの愛が溢れています。

テーマ的に若い方が書かれたのかと思いましたが、調べてみるとベテランの方でした。

r.nikkei.com

 

年齢を重ねても若い世代の文化をよく見られていると感じ、尊敬しました。

こういった新しいトレンドを受け入れていける大人になりたいものです。

 

 

「令和の漱石・太宰」とは?

 漱石「坊ちゃん」、太宰「人間失格」は青春小説の古典である。これらは最初は「文学では無い」と批判されてきた。同じようにライトノベルもいずれ青春小説の古典になる日がくるのでは…というお話でした。

 

記事のタイトルを見た人は「ライトノベル漱石・太宰と同列なわけないだろう」と思われた方が多いはずです。

国語の教科書に載るような文豪ですから当たり前です。

 

しかし、記事を読めば分かるように、本当の問いかけは「ラノベ漱石・太宰のようにいつか青春小説の古典になれるか?」です。

 

個人的には十分なれると思います。

漱石・太宰が生きた時代はもう100年も前です。

これから100年も経てば、もちろん青春の風景や価値観も変化するでしょう。その時に青春系のライトノベルは平成・令和の青春風景の証人になってくれるでしょう。子供たちが教科書で「俺ガイル」の文章を目にする…なんて未来もくるかもしれません。

 

しかしもちろん、全てのライトノベルがそうなるというわけではありません。

 

 

おわりに 「ライトノベル」は広義になった

ライトノベルの話になると必ずと言っていいほどあがる疑問が、「ライトノベルの定義とは何か?」です。

明確な定義付けは無く、解釈は人それぞれですが、個人的には書店で「ライトノベル」の棚に置いてあるものとしています。

 

今回の記事を読んで、思い出したことがあります。

ライトノベルの元祖と言われる『妖精作戦』というSF作品があります。

谷川流有川浩小川一水秋山瑞人と言った名だたる作家が影響を受けたと言われている小説です。

この『妖精作戦』が2011年に創元SF文庫より出版しされた際に、谷川流(『涼宮ハルヒの憂鬱』の作者)が解説を寄せています。

 

そこには「ライトノベル」というジャンルはとても大きくなったこと。

そこから更にSFやファンタジー、青春など細分化されていくから、「ライトノベル」とひとくくりにするにはもう限界があるということを書かれていました。

 

あれから10年。

ライトノベルの形はさらに多様化し、ライトノベルと一般文芸の間である中間文芸も広がってきました。

もちろん「ライトノベル」とひとくくりにするの限界だと感じます。

だからこそ、本当に大事なのは「ライトノベル」とひとくくりにするのを止めて、「ライトノベル=低俗」と言うイメージはもう過去のものだとみなさんに知ってもらうことなのでしょう。

渡航先生が「俺ガイル」をそういう作品にしたように。

 

 

皆さんは、青春系ライトノベルが青春小説の古典になれると思いますか?

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

*2

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妖精作戦笹本祐一東京創元社.2011